118号車 ベトナム国鉄補完計画・17終 【 ハノイの街角 】

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    ロンビエン駅の市場側の出口。ドンスアン市場へ続く道へと駅舎のある築堤からの階段を降りてゆく。今日はそれほどでもなかったが、日によっては商品が山と積まれてここが駅への階段だとは判らなくなっていることもある。その階段への路地は、この先に駅へと続く階段があるとは思えない状況にある。

     

     

     

    通りに出て左に進めばドンスアン市場の北側に出る。この通りは什器やバイク用品の店が並ぶ。とにかく交通量が多いので気を付けて進まねばならない。交通量といっても積載量と言ったほうが合っているかもしれない。

     

     

     

     

    掻き分けすり抜け進むとドンスワン市場に着く。どうやらここは衣料品がメインのようで食料品などの店はなかった。町中のあちこちにある小さな市場が生鮮や食料品を扱っているので、生活に近いところにそうした食料品の市場があって、ドンスアン市場を含めた周辺の問屋街はそれ以外のものが集まっているようだ。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    中央に吹き抜けのある市場の内部は明るく、これまで見たことのある市場と似ている。チェンマイのワローロット市場のような造りに一瞬親近感を覚えたりしたのだが、タイとは異なる活気に圧倒された。とにかく人々の動きが速いのだ。仕入れた商品が黒い袋に詰められてドカドカとトラックの荷台に積み込まれていく。その活気と喧騒に居場所を失い早々に退散してきた。観光客がのんびりと見学するような場所ではないようだ。

     

    以降は街を散策。犬の丸焼きの屋台は3か所発見しました。食文化の違いなので否定はしませんが、怖いもの見たさでどうしても目が行ってしまいますな。

     

     

     

     

    ドラえもんケーキと丸焼きと金魚売り。ハノイには見たことあるものと見たことないものが混在しているのだ。ちなみにドラえもんの隣には、はろうキテイがいるのだけれどもサン○オさんが怖いので載せないでおく。

     

    夕食は駅前のCOM屋さんでのっけ飯。さなぎを見つけたので少しだけ乗せてもらう。ベトナムでもさなぎを食べるのだと知って驚いた。沢山食べると飽きるけどアクセントに食べる分には好きだ。親父が川釣りで使っていたさなぎ粉の匂いに惹かれて、おいしいはずだと、その粉をこっそり食べてみた幼いころの記憶。あの直感が間違っていなかったと知ったさなぎ食文化の存在。そしてタイ、韓国で出会ったさなぎ料理。ベトナム最後の晩餐は虫でしめたのでした。

     

     

     

    こうしてベトナム国鉄補完計画は終了。一応の全線走破が終了したのでした。

     

    ハノイ〜ハイフォン        102
    ハロン〜イェンビェン       164

    ザーラム〜ドンダン        157×2

    ハノイ〜ラオカイ         294×2
    ロンビエン〜クワンチュウ      73×2
    合計              1314キロ

     

     

    最終日は8時のフライト。早朝に起床してノイバイ空港へ。霧煙る中を疾走するタクシーに肝を冷やすも、空港へは無事に到着。復路のフライトでは乗り込むやいなや「おかえりなさい」と声をかけられ、何事かと思いきや往路でお世話になったCAさんでした。

     

    ベトナムは全線走破してしまったのだ。してしまったのだけれども物足りない。もう一度ベトナムへ!そうした思いを実現するのは1年半後の2016年2月。そしてその時、遂にベトナムに牙を剥かれたのだけれども、それはまた別の機会に。

     

    次回からの旅は何を書こうか思案中です。お楽しみに!

     

     

     


    117号車 ベトナム国鉄補完計画・16 【 ノン傘と天秤棒のダイヤ 】

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      ここから先はひたすら田園風景の中を走るだけ。昨日乗ってきた路線を戻るのだからわかっている。代り映えしない景色をぼんやり眺めながらハノイに戻るだけ。そう思っていた。

       

       

       

       

       

       

      検札を終えた乗務員が車内販売員として売りに来たインスタントコーヒーを購入し、デッキに出てぼんやりとタバコを燻らせていると Trung Gia 駅に停車した。そこでこの路線の性格を理解した。

       

       

       

       

       

       

       

      ノン傘をかぶり、天秤棒を担いだ皆さんが編成の前後につながれた荷物車に乗車してゆく。荷物車だと思っていたそれは行商人専用車で、車内では売り物の仕分け・仕込みが行われていた。

       

       

      この列車は郊外の皆さんがハノイに行商・仕入れにいくための列車なのだ。ゆえに郊外起点での1往復が組まれていたのだ。タイグエン側を朝に経ち、郊外の皆さんを乗せてハノイに。それぞれがハノイでの商売を済ませ、夕闇に包まれる前に郊外に帰り着く。そういう運用なのだ。

       

      こうして列車はクワンチュウ線沿線の人々を乗せてハノイを目指す。

      Dong Anh 駅でラオカイ線に合流。ドンダン線との合流駅 Yen Vien 駅では標準軌の機関車が中国車両の貨物の入換え作業を行っていた。

       

       

       

       

       

       

      Gia Lam 駅では南寧往復の国際列車の横に停車し給水作業。次が終点なのに、どうしてここで給水作業なのかとも思うのだが、給水設備が上り線にしか無いのだろう。次の運用の為にここで給水しているものと思われる。そして後位に機関車を連結してプッシュプル編成で終点のロンビエンに向かう。

       

       

       

       

       

       

       

      終点のロンビエンには定時で到着。天秤棒を担いだ人たちはそれぞれの売り先に向かっていった。

       

       

       

       

      これで今回の旅での乗車は全て終了。列車はもうお腹いっぱい。

       

      しかしここはロンビエン駅。宿のあるハノイ駅はもう少し先だ。ロンビエンは旧市街の北側、すぐ南にはドンスアン市場があり、ロンビエン駅周辺は問屋街になっている。ワクワクする街並みなのはわかっていたのだが、これまでは列車に乗る事、見る事ばかりに気をとられていたのでじっくり見たことがない。

      幾度か通っているので地図はなくとも方向感覚はつかめている。宿に戻りがてら散策をすることにした。

       


      116号車 ベトナム国鉄補完計画・15 【 あの代理店め! 】

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        タイグエンで迎えた朝。朝食込みの料金だったので宿のレストランで朝食。海外では朝食込みのところに泊まることは少ないのだけれども、あればあったでありがたい。むしろ好きだ。

        なぜだか、宿のレストランというものには場末感がある。ついでにやっているという緊張感の無さが滲み出ている気がするのは自分だけだろうか。そんなレストランの広いホールで独りポツネンと美味くもないものを食べるのが醍醐味なのだ。尋常じゃない疎外感を楽しみにいそいそとレストランに向かい、やっぱりかという残念な感じの飯を食べる。お金を出して味わえるものではない。まさにプライスレスだ。料金込みだけど。

         

         

         

         


         


        そんな楽しい朝食を済ませ宿を出て駅に向かう。昨日は暗くて掴めていなかった街は朝の7時前だというのに人通りが多い。駅だと思って近づいて行くとバスターミナルだった。ここは省都タイグエン。冷静に考えればハノイ行のバスはあるはずだ。昨日のうちにハノイに帰る事も出来たのではないだろうか。旅行代理店ではバスは無いと言われたが、クワンチュウからハノイへのバスが無いのであって、タイグエンからのバスはきっとあったのだ(調べたらやっぱり走っている)。あの代理店め!とか思いながら駅へ急ぐ。

         

        そういえばタイグエンという地名に聞き覚え、いや見覚えがあった事に気付いた。前回ベトナムに訪れた際に買った緑茶のパッケージにその文字があったのだ。ベトナムなのに「Thai」という文字があったのでタイから茶葉を輸入しているのかしら?とか思って調べていたのだ。そう、ここは茶葉の産地なのだ。その独特な淹れ方からベトナムと言えばコーヒーのイメージが強いが、町中で見かけるのは圧倒的にお茶。茶葉は道端で量り売りをしていて、老人たちが憩う軒先の七輪に乗せられた薬缶の中身はお茶なのだ。

         

         

         

         

         

        駅前の市場が非常に気になるのだけれども時間が無いので駅舎に向かう。駅舎内の壁はパステルカラーで可愛らしい。列車は7時12分の発車。昨日乗ってきた列車がクワンチュウからやってくるのだ。本日唯一の上り列車QT92列車に乗り込む人は意外と多くて驚いた。バスがフォローしていないエリアに向かう人が利用しているのだろうか。

         

         

         

         

         

         

        隣のクワンチュウを7時ちょうどに発車した列車は時刻通りにやってきた。

        次のルーサ駅を出たところで進行左側に注意を払う。並走する路線はケップに続く休止線だ。軌道の状態は悪くはないしバラストも新しいようだ。一部区間は貨物などに供用されているのだろう。死んでいる線路ではない。クワンチュウ線の方は大きく右にそれて南に向かっていく。

         

         

         

         

         

         

         

         

        そうして列車は田んぼの中をひたすら走るという、往路で見た景色に埋没していくかに思われたのだが、この先の各駅での様子がこの路線の性格を教えてくれることになる。あの代理店め!という感情は撤回することになる光景を目にする事になるのだった。

         

         


        115号車 ベトナム国鉄補完計画・14 【 クワンチュウ線へ 】

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          同室の婆さんの点けたラジオの音で起こされてしまったものの、2度寝のおかげで寝台車では快適に過ごすことが出来た。ハノイに到着して、すぐに部屋に戻りシャワーを浴びる。駅構内のホテルというものはなんとも快適だ。汗をかく間もなく部屋に着いてしまう。このホテルをチョイスした自分を褒めてあげたい。

           

           

           

           

          さっぱりしたところで街に出ることにした。ハノイから出る路線はもう一つ、クワンチュウ線というのがある。1往復のみ運行の路線なのだが、クワンチュウを朝に発った列車が昼前にハノイに着いて、ハノイからはクワンチュウに向けては午後に発車するという運用なのだ。然るに終点で1泊しないと帰ってこられない。ローカル線ゆえに情報も少ない。果たしてクワンチュウは1泊できるようなところなのだろうか?

           

          これは面倒だ。期日的には行けないこともないが、毎日アホのように列車に列車に乗ってきて、いよいよ飽きてきてもいる。とりあえず昼飯がてら街に出よう。街を歩きながらどうするか考えることにした。

           

           

           

           

          クワンチュウ線に乗ればベトナム国鉄の全線乗車は達成される。しかし、ダラットの廃線を利用した観光鉄道をも含めてこそ全線乗車じゃないのか。ダラットの観光鉄道に乗りに来ることになるのならば、クワンチュウ線はその時に乗ればいいではないか。いや、ダラットとハノイの距離を考えたら効率的ではない。そんな事を考えながら街を歩いているとホアンキエム湖の周辺の安宿街にいた。そんななか通りかかった旅行代理店で声をかけられたのでフラリと入ってみた。

           

          「クワンチュウ線に乗りに行きたいのだけれども、そこからハノイに戻ってくるバスは走っているだろうか」

           

          答えは「NO」だった。しかし周辺の宿なら紹介できるという。宿はひと駅手前のタイグエンにあるという。宿が確保できるならと行くことに決めて早速手配をしてもらう。

           

           

          いつものシチュー屋で昼食を済ませ、宿に戻り荷を整える。クワンチュウ線の列車はロンビエン駅発着なので、そこまで歩かなければならない。発車時刻を確かめようとして今日が休日であることに気付いた。平日はハノイまで入ってこない列車が今日は来る。ハノイからイエンバイ行に乗ってロンビエンに向かった。

           

           

           

           

           

           

           

           

          ロンビエンで時間をつぶすことしばし、ザーラムから前後に機関車を従えたプッシュプルでクァンチュウ行が入線してきた。前後が荷物車で中4両が客車。休日だけあって発車する頃には満席になった。

           

           

           

           

           

           

           

           

           

          列車はロンビエン橋を渡ってザーラムへ。次のイェンビェンを出ると左に折れてラオカイ線に入る。2つ目の Dong Anh 駅から右に折れてクワンチュウ線に入った。ここからはひたすら田園地帯を走るといった状況になった。特筆すべきは3線軌条が組まれているということくらいだろうか。

           

           

           

           

          満席なので移動して車窓を撮影することなどもままならず、車窓は夕闇へと変わっていった。向かいの席に座った孫らしき少年を連れた女性が、孫のせがむ菓子をせっせと購入し、菓子の袋を窓から外へと投げ捨て続けるという様を見て呆気にとられているうちに列車は左にカーブし始めルーサ駅に到着した。この駅はケップから続くハロン線の休止区間との合流駅なのだが、合流側とは反対の席に座っていた為に休止線をしっかり見ることはできなかった。

           

          次の Thai Nguyen (タイグエン)駅でほとんどの乗客が下車。省都でありこの路線の主要駅なのだが1面1線の駅。折り返す設備が無いので次のクワンチュウが終点になっているようだ。

           

           

           

          一挙に寂しくなった車内。僅かの乗客を乗せて列車は終点のクワンチュウに到着した。線路はこの先さらに続くのだが貨物列車の運用しか無い模様。旅客列車はここまで。

          列車の到着を待っていた人々で意外と賑わっていたのだが、構内の撮影をひとしきり終えるともう誰もいなかった。

           

           

           

           

          バイクタクシーを拾えるだろうと思っていたのだが、降りてくる客はもういないとみて去ってしまったあとのようだった

           

          さてどうしたものか。畑の中の田舎駅。駅前に数軒の民家があるだけで他には何も無い。2車線道路の駅前通りは日本の田舎駅とそっくりな風情だ。この駅前通りを進めば街道に出るはずだ。畑の中の道を月明かり頼りに進むことにした。

           

           

          途中何度も心が折れそうになりながら進むと明かりが見えてきた。街道の手前に市場があり、生鮮を売る屋台が並んでいた。街道に出て、市街に向けて歩こうかと思ったものの道端で暇そうにしているタクシーを拾うことにした。これが正解だった。歩いたらば結構な距離だったに違いない。

           

           

           

           

          到着した宿はリゾートを意識した小洒落たホテルなのだが、併設のスナックからカラオケが鳴り響いているような場所だった。荷を解いて街に出て簡単に夕食をすますと早く寝ることにした。


          114号車 ベトナム国鉄補完計画・13 【 ラオカイ線の旅 】

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            改築中のラオカイ駅。仮駅舎は外観は綺麗だけれど中はくたびれているので、もともとあった建物を利用しているような気がする。

             

             

             

             

            ラオカイ線の線路にはまだ先に続いている。旅客列車はラオカイ駅が終点。貨物列車も現在はこの先へは走っていないとのこと。だけれども線路は続いている。続いているのだよ、中国の昆明まで。

             

            ラオカイは国境の街。ソンホン川に流れ込む支流の向こうは中国の河口という街になる。そこに架かる橋、つまりは国境の橋まで行ってみることにした。

             

             

             

             

            線路は街道に面した商店などの裏手を通っていた。裏路地にある線路を気にかけながら街道を国境方面に進む。みるみる暗くなる中、町はずれに進んでゆく。もちろんドンドン寂しい景色になっていくし街灯も少なくなっていく。車どおりはあるのでこの先にも人の気配があるのは確かなのだが、引き返したい気分になってくる。

             

            緩やかな坂道を登りきったところが街のはずれのようで、河岸段丘が狭くなったそこで街は終わった。迫り出してきた段丘に沿って線路が押し出されてきて、街道に並んだ。

             

             

             

            並んだけれども真っ暗でストロボも効かない。ここからは下り坂に。川面から見て2段目の段丘上には街道と線路だけ。その狭い段丘を進むと線路は再び右手にそれて築堤を進んでいく。街道は坂を下り続ける。線路の上を行こうかとも思ったけれども、国境付近の線路を暗闇のなか歩くのはリスクが高いと判断してやめておいた。ガーター橋などがあったら枕木の隙間に落ちちゃうかもだしな。懐中電灯も持ってないし、蛇とかいて咬まれたら嫌だし。

             

             

             

             

             

            勇気ある撤退。そう判断して進むと随分と派手な橋が見えてきた。ソンホン川の対岸とを結ぶ橋だ。ここから先は国境エリアで商店や飲食店が建っていた。さらに進むと大きなホテルが建ち、並んでイミグレーションのビルが建っていた。ラオカイの駅前とは随分と雰囲気の違う立派な建物が並んでいる。中国に対して国威を見せているかのような建物群だ。

             

             

             

             

             

            イミグレーションの先に国境にかかる橋があった。線路はもう少し北側にあるようなので、そちら方向に延びる道を辿っていくと踏切に出た。踏切のすぐ先が国境に架かる鉄道橋。不審者を発見しやすくするためだろう、欄干には電灯が連なり線路内が明るく照らされていた。この橋の先は中国、河口の街。線路は昆明まで延びているのだが、軌道状態が悪くて供用されていないとの情報もある。中国大陸広しといえども標準軌ではなくメーターゲージの国鉄線があるのは昆明と河口を結ぶこのエリアだけ。メーターゲージ採用の理由がこれなのだろう。そしてミャンマーに居る中国製の機関車や客車はここら辺の出自なのだろう。

             

             

             

            久しぶりの陸の国境の見物に満足し、来た道を戻る。途中のCOM屋さんで夕食を摂る。ベトナムで食事に困ったら「COM」の看板の店に行けばよい。出来合いの惣菜から好きなものをチョイスしてプレートに乗せてもらう。今回は3万ドン。日本円にして約150円だった。

             

             

             

             

             

             

            駅に戻ると夜行列車に乗る客目当ての露店が駅前に出ていた。飲み物くらいしか売っていないが観光地価格だ。ホームに出るとハノイに戻るSP4の準備が整っていた。

             

            久しぶりのベトナム寝台。今回は下段が取れなかったので上段だ。梯子は無く、通路側の壁に生える突起に足をかけて登る。カーテンが無いのでプライベート空間は確保できない。なので早めに乗り込んで着替えようと思ったら同室になる家族たちがやってきてしまった。ジーパンのまま寝たくはないので、着替えをもって列車の車端部でそそくさと短パンに履き替える。同じような欧米人がやってきた。ここで手早く着替えると良いよと伝え、互いに自国じゃありえないと笑いあう。列車は定刻に発車。同室の家族は言葉の違う人物がいる事に困惑しているようだし、することもないので早々に眠りに就いた。

             

            翌朝、なにかの音で目が覚める。同室の家族の婆さんが点けたラジオの音だ。列車の振動や音では起きないのに不覚だ。起きちゃたけど何の音?という顔をして下段をのぞき込んでから2度寝。おかげさまでハノイ到着時には無事に起こしてもらえました。

             

             


            113号車 ベトナム国鉄補完計画・12 【 ラオカイ線の旅 】

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              ラオカイ線の中間地点、 Yen Bai 駅を出た車内は乗客も減ってきた。それぞれが昼食を摂り、午後の気怠い雰囲気に車内はつつまれていく。隣の座席の若夫婦のところには子供好きのおばちゃんがやってきて子供をあやし始めた。

               

               

               

               

               

               

               

              列車はソンホン川(紅河)に沿ったり離れたりしながら進んでいく。貨物列車との交換が多く、ラオカイ線は他の線に比べ活況のようだ。

               

              Trai Hut 駅の手前で老夫婦が支度をはじめた。窓を開けてもうすぐ家が見えてくる。ほらあそこだと指を差し教えてくれるも、こちらには見当もつかない。知り合いが見えたらしく窓から大きな声でそちらに向けて叫んでいる。なんて長閑なのだろう。

              駅に着くと息子さんが出迎えていた。厳密にいうとホームまでバイクで迎えにきていた。そしてそこから3人乗りで去っていった。とにかく自由すぎる。しかしこちらでは普通のことなのだ。

               

               

               

               

               

              Trai Hut 駅でしばらく停車しているなぁと思ったら、上りの旅客列車がやってきた。本来はもう少し先で交換する予定のLC4だ。こちらが50分近く遅れているので交換駅が変更になったようだ。

               

               

               

               

              次の Lam Giang 駅に着くと誰も降りない。と思ったら駅舎は反対側。側線に貨物列車は停車しており、降りた乗客は列車の隙間を歩いて駅舎に向かっていた。

               

               

               

               

              小腹が減ってきたので再び車内販売の菓子などを買う。朝の老婦人のように、ぼったくられているようならば周りのみんなから助け船が出るだろうと思っていたのだけれど、見ているだけで何事も起きず。販売員が去ると自分のもとに集まってきて、これは幾らでこっちは幾ら。2万ドンくらいぼられていると教えてくれる。日本円にして100円くらいなのだが、どうしてやり取りをしている時に口をはさんでくれなかったのだろうと思う。

               

               

              帰国してから気付いたのだが、ベトナムでは公務員か否かでのヒエラルキーのようなものが存在しているのではないだろうか。列車ボーイが駅間で変身して営業する車内販売員は国鉄職員。公務員である。朝の老夫婦の奥さんも元教員だとの事だから元公務員。公務員同士であれば対等に渡り合えるのだが、公務員でないものは公務員との衝突は避けているのではないだろうか。車内販売に口をだして顔を覚えられると後々面倒な事になるのではないだろうか。だからやり取りは見ていても口は出さず、売買が終わってから教えてくれたのだろう。うがった見かたかもしれないが、これが今のベトナムの「社会主義」の在りようなのかもと一人で合点している。

               

               

               

               

               

               

               

              だんだんと山がちになってきた沿線には牛の姿が増えてきた。農耕用の牛さんたちが田んぼの中で泥浴びをしたりしている。犬の散歩のように牛を連れ歩き、草を食ませている人の姿が増えてきた。そうした暮らしをしている人をみると羨ましくて仕方がない。自分もいつか牛と暮らしてみたいものだ。

               

              Pho Lu 駅手前で隣の若夫婦が降りる準備をはじめた。旦那は窓外に友人を見つけたようで大きな声でそちらに向かって叫んでいる。繰り返されるこの光景。人は車窓に知り合いを見つけると声をかけたくなるものなのだろう。冷静に考えると自分もよくやっていた気がする。

               

               

               

               

              若夫婦は降りて行った。彼らに関する情報はこの笑顔の写真のみだ。一期一会だけれども、それで良い。彼らと自分が同じ列車に乗っていたという事実が変わることはなく、それぞれがふと思い出せればよいのだと自分は考えている。

               

               

               

               

               

               

               

              列車の遅れは増す一方で、終点のラオカイには80分遅れの17時6分に到着。駅舎は改築中のようで仮駅舎だったのが残念。駅前はサパなどの観光地への客引きで賑わっていた。

               

              3時間後にはハノイに向かう夜行列車に乗る。だけれども見ておきたい場所がある。夜の帳が降り始めて暗くなってきたけれども、駅舎でぼんやりとするくらいならと意を決して見に行くことにした。

               


              112号車 ベトナム国鉄補完計画・11 【 ラオカイ線の旅 】

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                土曜日の混雑した車内。自分の席のはずだった窓側の席には老夫婦の旦那が座っており車窓を楽しめる状況にはない。まさか車窓を楽しむために鉄道に乗りに来るという酔狂な趣味なんてものはベトナムの人々には理解できないのであろう。あんたはこっちに座れと老夫婦の奥さんに促され、奥さんの隣の通路側の席に座る。

                 

                 

                 

                 

                しばらくして車内販売がやってきた。販売員は前述のとおり各車両のボーイ係が駅間で営業しているものだ。茹でた餅キビを購入し言われた通りの金額を出そうとすると横から奥さんの手が伸びてきた。ボッタクリ価格に気付いた奥さんが制止し正当な金額に直してくれたのだ。販売員は悪びれるでもなく何事もなかったかのように代金を受け取ると行ってしまい、奥さんは気をつけなさいと怒っていた。

                 

                ここから車内の人々との会話が始まった。奥さんは元教師との事。そこまでは分かった。以降の会話は指さし帳などを活用しながら進めるももどかしい。ふと気づいてipadを持ち出した。ベトナムのSIMは挿してあるので電波はキャッチできる。設定からベトナム語のキーボードを呼び出してgoogleの翻訳サイトを表示。ここから一気に会話が始まった。周りの人々が集まって会話の進むipadがあちらこちらと回覧されてゆく。

                 

                年齢は?結婚しているのか?月収は?などなどの会話。通路を挟んだ席の子連れの若夫婦の旦那は月収を聞いて、ベトナムだったら奥さんをあと二人は持てるぞと言って笑い、奥さん叩かれていた。日本に働きに行こうかなどというので、日本の物価の高さを教える。例えば日本でフォーを食べるとベトナムの6倍くらいの価格、家賃はワンルームでこれくらいと示すと「とんでもない」との返事。為替レートの関係でベトナムからみれば日本のサラリーの方が高く感じるかもしれないけれど、物価は比例して高いので生活は変わらないよ。むしろベトナムの方が幸せに暮らせると思うよと言っておいた。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                各駅で人が降り、乗ってくる人は僅か。週末を田舎で過ごす人々がハノイから帰っているようだ。車内は随分空いてきた。ソンホン川(紅河)に沿って進むラオカイ線は平野部を離れ、川沿いを進むようになってきた。中流域に進んできたという事だろう。窓外を眺めているとトウモロコシが隙あらばという勢いで植えられている。線路脇の土手などにもみっちりと植えられ、みんな逞しいなぁと思う。

                左手に流れる川に沿って右に左にとクネクネし始めると Yen Bai 駅に30分ほどの遅れで到着。

                 

                 

                 

                全長294キロのラオカイ線の中間にあたる155キロ地点に Yen Bai 駅はある。この路線の主要都市でもあるようでこの駅発着の列車が1往復設定されている。この列車を利用してのラオカイ線攻略も考えていたのだが、今回は時間的制約で断念。田舎町で一泊したかったのだけれどもなぁ。

                遅れてはいるものの15分ほどの停車時分はそのまま。機関車の給油作業や荷物車の積み下ろし作業の時分があるので削れないのだろう。ちなみにここまでの遅れの原因は各駅の荷物扱いである。

                停車中に社外に出て身体を伸ばしつつ一服。ついでに昼食を手に入れた。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                名もなき駅弁3万ドン。およそ150円。個人営業だろうから売り子さんによってメニューは違うし、同じ人でも毎日内容は変わるのであろう。一期一会かもしれない駅弁。量も小腹を満たす程度で丁度良く、安いので見かけ次第買ってしまう。台湾あたりだと名物駅弁として発展していくものがあったりするのだけれど、こうした弁当も捨てがたいのだ。二度と食べられないかもしれない駅弁。書いていて何処かに食べに行きたくなってきた。

                 

                ハノイを発ってここまで5時間、そしてここから5時間。国境の街、ラオカイはまだまだ先だ。

                 


                111号車 ベトナム国鉄補完計画・10 【 ラオカイ線の旅 】

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                  ハイフォン線とハロン線、ドンダン線と日帰りの旅を続けてきた。
                  今日は日帰りのきかないラオカイ線に乗りに行く。しかしラオカイで一泊するのは非常に効率が悪い。なので寝台列車で帰ってくる行程を組んだ。我ながらどうかしていると思いながらも早朝に起床し宿を発つ。
                  初日は外を回ってハノイB駅の正面から入ったが、今日は宿のあるA駅から入場し構内を横断してホームに向かう。

                   






                   

                  一昨日に乗ったハイフォン行に並んでラオカイ行、LC1列車が停車している。
                  編成は 機・職・ハザ・ハザ・ハザ・シ・ハザ・ハザ・ハザ・ハザ・ハザ・ハザ・ハザ

                  6時ちょうどにハイフォン行HP1が発車していった。LC1は6時10分の発車。マニア活動を切り上げ発車に備えることにする。

                   


                  ホーム上に人が多いなと思いながら乗り込んだ車内は満席。今日は土曜日。週末なので多くの人が動いているのだろう。指定された席に向かうと既に先客がおり、空いた通路側の席に座ってくれという。窓際に座って車窓を楽しみたかったのだけれども、あまり気にしないことにする。
                   


                  車窓が楽しめないので食堂車へ朝食を食べにいくことにした。この列車の食堂車は車端部ではなく中間に組み込まれていた。これまでの経験から、ベトナム国鉄の食堂車は車端部に連結されていることが多かった。なぜなら厨房と通路が分けられていないからだ。したがって今日は厨房を通り抜けて食堂に向かった。
                   






                   

                  揺れる車内でフォーを食べ体を温める。
                  混雑した列車は好きではない。日が悪かったなぁと思いながらしばらく食堂車で過ごす。

                  座席に戻ってしばらくしたころ、状況に変化が現れた。
                  混んだ列車に乗り合わせたからこその展開があったのだ。


                   


                  110号車 ベトナム国鉄補完計画・9 【 ドンダン線の旅 】

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                    駅員が総出で見送るという物々しい雰囲気のなか、乗客を最後尾車両のみに押し込んだDD4列車はドンダン駅を発車した。

                    発車直後、駅舎とは反対側から大きな荷物を背負った女性が二人、乗せてくれと動き出した列車に向かって走り寄ってくるも、列車は速度を緩めることなく進んでゆく。密航者だろうか。だとしたら堂々としすぎている。ただの乗り遅れだとは思うが、ちょっと待って乗せてあげても良いのではないかとも思う。

                     



                    各駅に停まるたびに最後尾車両には乗客が増えていき、そしていよいよ座りきれなくなった。途中駅でどうして前の車両に乗せないのだと乗客が抗議し、ついには隣の車両に移動する人が現れはじめた。空いた貫通ドアから隣の車両をのぞき込むと特に変わった様子はない。そうした事が続くうちに、途中駅で前部車両の開放をはじめた。ハタとあることに気付き、自分も混雑した車両を抜け出し、空いた車両に移動した。

                    この列車には車掌の他に各車両に一人ずつ乗務員が乗っている。いわゆる列車ボーイだ。ボーイといっても女性が主だ。アテンダントと言ったほうが解りやすいかもしれない。各駅では手動の乗降ドアの管理をし、自車の乗降終了合図を車掌に送る。車内には執務カウンターがあり、乗客に到着駅を知らせたり駅間走行中は車内販売員にもなる。4両編成なので4人の列車ボーイが乗っている。

                    乗客を1両だけに押し込めば、他の3両の列車ボーイは休むことが出来る。どうやらそういう算段で我々乗客は1両に押し込められた模様だ。各駅から乗り込む乗客が増えていき、乗客に押し切られる形で簡単に破綻したのだが、それに気づいた自分は空いた車両に移動したのだ。こうした事ができるのは「社会主義国」の国鉄だからであろう。カッコつきの社会主義国ゆえに色々と緩いが、官吏は強しである。そして「公務員」と一般市民の間には乖離があるようだ。その乖離のありようをむざむざと見せつけられるのは翌日のことである。

                     



                    移乗した席でのんびりとくつろぎながら、来た道を戻るという不毛な作業を消化してゆく。
                    ある駅から老人が大きな箱と薬缶を提げて乗り込んできた。何かの商売道具かに見えるけれども、これは水タバコの喫煙具。大きな筒がタバコを吸うための筒で、箱には喫煙道具や茶具が入っている。ブオーブオーと大きな音を立てて喫煙する様は初めて見ると驚いてしまう。こんなにも大きな道具を携えて出かけるとは、実に悠長なことだと思う。

                     

                    乗り込んできた物売りの老婆から何かわからないけれども食べ物らしきを購入。バナナの葉に包まれたそれは甘い餅だった。。ベトナムではこうした餅にもよく出会う。美味しいのでもう一つと思ったが再び売りにやってくることはなかったのが残念だった。
                     



                    淡々と時間は過ぎ、終点のザーラムに到着。南寧行の国際列車には明かりが灯り出発に向けての準備が始まっていた。
                     



                    駅前からタクシーを拾いホテルに戻り、夕食がてら再び街に出る。ハノイB駅に寄って明日のラオカイ線の往復チケットを購入。雨続きで寒いので駅前の衣料品店で長袖のジャケットを探す。無難なデザインのものを選び出すと20US$だという。ドルガバのワッペンがついたパチモノのジャケットにしては強気だ。出せて15US$だと交渉し決着。それでも高く感じたが、帰国後にワッペンを外して愛用してたりするので、今になっては良い買い物をしたと思うのだった。

                     

                    110号車 ベトナム国鉄補完計画・8 【 ドンダン線の旅 】

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                      次の yen trach 駅は大きくカーブした駅だった。駅を出ると右手に分かれていく線路が見えた。ナーズオンまで31キロを結ぶドンダン線の支線だ。公式の時刻表に旅客列車は存在していないので貨物扱いのみのようだが、地元民しか知らない列車が走っているような気がしないでもない。降りて実地調査をしなければ分からないことで気にはなるけれども、先達が誰も触れていないので旅客列車の運行はないのだろう。
                       








                       

                      次いでランソン駅に到着。ガイドブックにも載るこのエリアで一番大きな街だ。多くの人がここで降りていく。
                       




                       

                      そしていよいよ終点、ドンダン駅に到着。機関車はすぐに切り離され機回しに向かっていった。
                       








                       

                      国境の駅だけに広い構内を持つ。隣には一回り大きな中国の貨車が停車していた。イミグレーションの機能を持つ駅舎は大きく立派だが、中はガランとして寂しい感じだ。深夜にやってくる北京・南寧行の国際列車の発着の際がこの駅がいちばん活気付く時なのだろう。駅舎の正面中央には大きなホンノンボが据えてあった。ホンノンボとは盆栽の水鉢版とでも言えばよいのだろうか。ベトナムではよく見かける盆景である。詳しくは宮田珠己さんの著作、「ふしぎ盆栽ホンノンボ」を探して読んでくれたまい。
                       












                       

                      街の中心部は駅を跨ぐ道路を渡った向こうにある。ゆえに駅前には何もない。広い駅前通りがあるけれどもめぼしい飯屋も見当たらない。折返しの発車まで1時間半。街まで行くには時間が無い。しかし近辺には飯屋も無い。上空に架かる橋の入り口は遠いようだ。どこかに線路を越えるショートカットがあるかもしれない。そう思ってそぼ降る雨の中、線路に沿う道を北に向かった。街道に差し掛かり飯屋を見つけるも、ローカル過ぎて異邦人を見て見ぬふりをされてしまう。もう少しトボトボ歩いて線路の方角を見ると線路ははるか眼下にある。少しずつ坂を登ってきてはいたのだが、俯瞰するに線路向こうに行けるルートは見当たらない。
                       


                      仕方なしに来た道を戻り、目星をつけておいたフォーの店で昼食を摂ることにした。簡単な英語すらも通じない店で温かいフォーを啜る。雨で冷えた身体にはありがたかった。

                      駅に戻ると機回しは終了しており、ちゃんと流線型機関車の前部が先頭に据えられていた。運転士にどうやって機関車の向きを変えたのか?ターンテーブルが構内にあるのかを拙い英語で尋ねるも、困惑した笑顔を返してくれるだけで答えは出なかった。

                      後にGoogle mapの航空写真の解像度が高くなっていたので構内をつぶさに確認したところ、構内にデルタ線が存在していた。デルタ線で機関車の向きを変えているのだ。今までいくつものデルタ線を確認しているが、ターンテーブルは未発見である。どうやらベトナムにはターンテーブルは無いようである。機関車の方向転換=ターンテーブルという図式は狭い国土を走る日本の鉄道に慣れてしまったが故の発想で、広い土地を確保できるのであれば3基の転轍機があれば済むデルタ線の方が安価なのだ。

                       








                       

                      こうして機関車の向きを変えて組成された折返しのハノイ行。発車前の構内が何故だか物々しい。駅舎の前に職員が総出で見送りに並んでいる。列車に乗り込もうとすると、指定号車ではなく最後尾の車両乗れという。
                      構内をお供を連れて闊歩していたお偉いさんらしきがいたので、その見送りだろうか。そのVIPを列車に乗せたが故に、警備上の理由で移乗させられたのだろうか。はたまた国境駅だからこそ密入国者の列車乗り込みを警戒して、発車間際の飛び乗りを防ぐために乗車口を制限したのかもしれない。などと想像が頭の中を巡る。一つの車両に押し込められた乗客で車内は混雑している。

                      一体何が起きているのだろうか。この謎は追々解けていくことになる。


                       


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                      齋藤彦四郎
                      隔週木曜更新。
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