147号車 サワンカローク線の旅・3終 【 イヌとタコとネコの駅 】

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    憧れの盲腸線の終端、サワンカローク駅。

     

     

     

     

     

     

     

     

    ホームの端に置かれた、頭部がペンキで赤く塗られた石。もしやこれは停止位置目標なのではないかという疑念がわいてきた。列車が到着すれば何かわかるような気がする。

     

    駅前に何かあるわけでもない。無論、駅にも何もない。今宵の宿を予約したりして時間をつぶすも、いよいよやることもない。少し早いが切符を手に入れたいと思う。しかし窓口に人の気配は無い。

     

     

    回り込んで開け放たれたドアから出札口の中をのぞき込むと、犬が気持ちよさそうに寝ていた。壁には凧らしきが掛けられている。もう一つ隣の部屋に居たアロハシャツを着てパソコンでソリティアに興じている人に声をかけると切符を発行してくれた。駅員さんのようだ。列車がやってくるまで2時間。のんびりとしているところを邪魔してしまって申し訳ない気持ちになる。

     

    切符を見ると4列車の表記。やはりここからはバンコク行の4列車として発車するようだ。ウタラディットまでは座席未指定で50バーツ。白タクで800バーツもかけて来たのにね。

     

     

     

     

     

     

     

    構内には他の犬たちも幸せそうな顔で寝ている。とても平和な景色だ。そんな犬たちの平和を壊さぬよう、こちらも負けじとボンヤリしていると、長い尾が付いた凧を携えた少年が貨物用のホームを歩ていくのが見えた。

    幾度かの失敗の後に凧はスルスルと揚がっていった。

     

     

     

     

     

    次いで地上には猫が現れた。線路にちょこんと座って何かを凝視している。そしてハンターの顔になり、姿勢を低くしてスズメを捕まえに向かった。不漁に終わった猫はどこかに行ってしまった。

     

     

     

    犬たちが起きて動き始めた。しばらくすると列車がやってきた。

     

     

     

     

     

     

     

    アロハシャツから制服に着替えた駅員さんが列車を迎え、列車からは助士が顔を出し、タブレットをキャッチャーに掛ける。定刻からは10分ほどの遅れ。ここでは定時と言ってよいほどの誤差だ。

     

    そして謎の赤いペンキが塗られた石は、果たして停止位置目標だったのだろうか。列車は3mほど手前に停車している。先で線路がカーブしているのでこの石は停止位置限界なのかもしれない。

     

    停止位置目標は、あくまで目標なので車両のどこの部分を合わせればという厳密な規定は無い。線区の指導によって、連結器の先端だ、車両の妻面だ、運転台の側窓の中心だとまちまちなのだ。電車の運転ゲームが流行った頃には子供たちが脇に待ち構えていて、こちらは腕を見せてピッタリ停めたつもりが「30センチ手前!」とか言われてムスッとしてしまったのは、この合わせる位置の概念の誤差にある。はっきり言ってしまうと、あくまで「目標」なので「その辺りに停ま」れば良いのである。「停止位置」に意義を唱えるならば動力車操縦者運転免許を取得すべきであり、取得すれば意義を唱えようなどとは思わなくなるだろう。

     

    そうした日本のギスギスした鉄道界隈の雰囲気とは対極にある、こうしたノンビリした鉄道に触れて自分は英気を養っていたりするのだ。これでも列車は走れるし、遅れても誰も目くじら立てたりしない。本来鉄道が持っていたはずの牧歌的な側面をみて、まだまだ大丈夫だと安心するのだ。

     

     

     

     

    遅れて到着したものの、折り返し即座に発車とはならない。給水したりして当初の折り返しの停車時分、15分きっかり停車したのちにバンコク行4列車は発車。車内の乗客は数人。クローンマップラップ駅からはバンコクに向かう人が一人だけボストンバックを抱えて乗り込んできた。

     

    座席の下に何かが落ちている。注意して見るとゴキブリホイホイ。うーむ。もう少し隠すことはできなかったのだろうか。列車内にゴキブリが出ることに驚きはしない。日本だって出るし対策は施されている。ちなみに弟は気動車だった頃の小浜線の車内でフナムシを見たことがあるそうだ。

     

     

    ウタラディットには17分遅れの20:13に到着。

     

     

    列車を見送って宿に向かう。ウタラディットの中心街は駅から東に10分ほど歩いたところにある。その街中に今夜のホテルがあるのだが、地図を頼りにたどり着いた場所はショッピングセンター。

     

     

     

    春節のデコレーションが施されているのだけど、何故か鳥居。中華系が多いので春節を祝ってはいるのだけれど、どこかで間違った情報が混じっているみたいで、こうしたところもタイらしい。日本人も春節を祝うものだと思われていてもおかしくない。ホテルはショッピングセンターの上階だと判断して中に入るも見つからず。ホテルのフロントは裏手にあった。

     

     

     

    荷を解いて夕食へ。無駄に陽気なフロントマンは「この街の名物はパッタイだ。旨いぞ!」と猛プッシュするも具体的なオススメの店は無いらしく、その辺にあると言われたあたりの店で夕食。旨いかどうかは別にしてパッタイだ。

     

    こうしてサワンカローク線の旅は終わったのですが、翌日のチェンマイへの帰路がちょっとどうにかしていたので、引き続き進めていきたいと思います。

     

     

     


    146号車 サワンカローク線の旅・2 【 唯一の中間駅 】

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      さて、サワンカロークに向かいたい。交通手段は白タクだけのようだ。駅前にたむろする白タクドライバー達に交渉すると、「エイティー」だという。約40キロの距離が80バーツ、日本円にして約240円のはずがない。たぶん言い間違いで800バーツなのだろうと、こちらで合点して了承する。

      この白タク料金、どこの町までは幾らと決まっているようだ。駅によっては公然と白タク乗り場があり、料金表が掲げてあったりする。日本では考えられない事だけれど、公的な交通機関が整備されてないならば、それを整備するのではなく、イレギュラーなものをレギュラー化してしまうのがタイらしさなのだ。
      料金については少し高く感じるが、楽なものに対価を払うことには納得ができる国民性ゆえに、これで問題なく成り立っているようなのだ。

      案内されたのは一番若手のドライバーの車。前回の駅前の写真に写り込んでいる白いランエボ。日本からの中古車だろう。さりとてランエボだ。乗る前から「きっと飛ばすんだろうなぁ」と身構える。走り出して早々にガソリンスタンドへ。客を乗せてからガスを入れるのは最早普通の事なので動揺はしない。ガス代はこちら持ちだが、精算の際に相殺する。

      町を出るとサトウキビ畑の中を快走する。いくつかの集落を抜けるが減速はしない。ほとんど信号機が無いので80km/h以上を維持して突き進む。

       

       

      途中で複数の農耕用小型トラックとすれ違う。日本の軽トラのようなサイズだが、屋根はあれどもフロントガラスもドアも無い。耕運機のエンジンらしきをフロントに横置きした特異な形状。他の町では見かけないのでこの付近の町工場で製造しているのだろう。この辺りに再び訪れることがあれば写真に収めておきたい。

       

      ちなみに大型バスについても町工場で手作りしているのを見たことがあるので、タイ国内をバスで移動したいとは思わない。エンジンルームを電飾で照らしているようなバスが、不用意に車高が高いバスがメーカーメイドなはずがないのだ。こういうニッチな部分に切り込めば日本車の需要はまだまだあると思うのだけれど、どうだろうか自動車メーカーの皆さん。

       

      白タクは大きめな街に差し掛かった。この先に踏切があって、その先を右に曲がった先に駅があるはずだ。ワクワクしながらグーグルマップとにらめっこして、駅前で停めてもらう。

       

       

       

       

      サワンカローク線唯一の中間駅、クローンマップラップ駅。他に4つの駅があったのだが全て廃止。この駅のみが生きている中間駅だ。幹線道路からは奥まったところにあるが、母屋は反対側の住宅街に面した側に建っていた。

       

       

       

       

       

       

       

      正面側には屋根付きの門があって、生垣で囲まれた中庭もある。ガラスの電話ボックスなんかもあって、鉄道模型の「木造駅舎」セットのような趣きの駅構えだ。1日1往復だけの駅だけれども駅員さんがいて、暇を持て余してキッチリと構内を整備してあるのがわかる。至る所のペンキはピカピカで植え込みも綺麗になっている。こういうところで働けるのは羨ましすぎる。

      構内の配線を見てみると、1面2線でホームは副本線にある。果たして通過列車が、対向列車があるのだろうかと疑問が湧いてくるが、日本の国鉄がそうであったように開通当時の仕様をそのまま温存しているのだろう。

       

       

      時刻表を見てみると、これまで思っていた事と時刻表が異なっている。バンコク発の3列車がサワンカローク線を1往復してシラアットに向かい、折り返し4列車としてバンコクに向かうと思っていたのだが、この時刻表によれば、バンコク10:50発の3列車が17:24に1番線から発車して終点サワンカロークに17:46に到着する。サワンカロークを18:01に発車した4列車が18:24に1番線から発車して終点バンコクに4:00に到着する。となっている。

       

      サワンカーロク線を1往復することによる混乱を避ける為に表記を変えているのだろう。たぶん運用上は3列車はバンコク発サワンカローク行で、4列車はサワンカローク発シラアット経由バンコク行なのだ。いやまて、そうすると4列車は本線上でややこしいことになる。なのでサワンカローク線内は実務上は別の列車番号を振っているような気がする。

       

      そんなことを確認したりして再出発。目的のサワンカーロク駅には1時間45分ほどで到着。現在は15時45分。列車が来るまであと3時間。暇だ

       

       

       

       

      暇なので駅周辺を散策。駅前通りはチーク材で建てられた昔ながらの商店が並んでいた。車に貼られた謎の日本語ステッカーはタイに来るたびに欲しくなるが、これを自分の車に貼る勇気は無い。トヨタ車なのに「無限MUGEN」のステッカーが貼ってあったりと突っ込みどころ満載なのだけれども、日本びいきの方は日本語自体がカッコイイので問題ないのだろう。

       

       

      線路は先に延びる気配があるのか確認に向かうも、先には家が建てこんでいて気配なし。さてやることがなくなった。これはあれだ。駅でひたすらボンヤリするしかない。

       


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      齋藤彦四郎
      隔週木曜更新。
      電車で喰えているので、電車マニアではありますん。

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